memoire


2.淀川長治氏
(1909-1998)
「それでは次週を御期待下さい。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ...」の映画評論家、淀川長治氏。亡くなる平成10年11月11日の前日まで32年間「日 曜洋画劇場」の解説者として映画の魅力を語り続けました。試写室に来ていただくために、晩年暮らしていらした六本木の全日空ホテルまでお迎えに上がり、 配給予定の作品をご覧いただいたものです。
イブ・モンタン主演「モンタン、パリに抱かれた男」の公開時にモンタン夫人のアミエル氏を招聘しましたが、淀川氏も試写会場に駆けつけてくださいました。
フランスの友だち
誰が見てもこの映画から“夢”の詩をうたう声を聞くにちがいない。
映画は絵のような美しい田舎の村を見せ、草の匂いがただよう。兄と弟と、この平和このやさしさ、ここにも同じよう兄と弟の夢を見る。この映画は牧歌でありその歌は永遠の平和の歌でもあったものを戦争が根こそぎにむしりうばう。
美しい村の調べを思わすこの映画の音楽のなかに、子どもと大人と国と国の“ものがたり”がミルクのあまい匂いでしみこむのに・・・戦争がミルクの白さを血の色に変えてゆく。
これはリシャール・ボーランジェの演技に酔える映画であった。しかも泥だらけの軍服の彼扮するドイツ兵ヨーゼフが子供ふたりに怒りをぶつけわめき泣くその演技には・・・逆に・・・詩をうたう静けさを受けた。ジャン=ルー・ユベールの、ちかごろの映画に汚されぬ昔のサイレント映画さえ思わせるこのゆるやかな映画の流れが美しい。しかも物語を1ページ1ページと興味の渦にひき入れてゆく小説さながらに、これはあの兄弟ふたりがボートを漕いだあの流れも見えぬ静かな水面のように物語を進めていった・・・
(淀川長治)




モンタン、パリに抱かれた男
J.ラビブ監督とモンタン夫人の
mm C.アミエル

 
 
 
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