memoire
 

故田山力哉氏とカンヌで
1.田山力哉氏
(1930-1997)
辛口毒舌の映画評論家。早稲田大学卒業後、保険会社、NHK国際局に勤務後、フリーランスの仏語翻訳家、映画評論家となり、巴里映画設立後には映画業界きってのフランス通として大いなるアドバイスをいただきました。
・・・だが日本既公開の「フランスの思い出」のジャン=ルー・ユベール監督の新作「アプレ・ラ・ゲール(戦後)」が、唯一興味を惹くものであった。前作でやや荒んだ酔っ払い、一見意地悪そうだが、やがて主人公の少年と共感し合うという男を演じた俳優リシャール・ボーランジェが、今度は第二次大戦末期に傷を負った独兵(独仏のハーフという設定)を演じ、たまたまであった二人の仏少年と最初はいがみ合い、ついには友情を抱きあう、という役どころで、前作と本質的には同じタイプの男を演じていい味を出している。このボーランジェ、現在四十八歳だが、「ディーバ」「サブウェイ」などの脇の悪役を経て、今では本国の人気スター、『夜の街は美しい』という小説も書いて二十五万部も売るベストセラーとなっている。実は私と二十年来の旧知のパリ在住の日本女性が彼と親しく、面白い人物だから会ってごらん、と自宅の電話番号を教えてくれたので、掛けてみると快く郊外の自宅からシャンゼリゼのホテル・ランカスターのロビーまで出て来てくれた。
しゃがれ声でユベール作品の役柄そのままの人物のようだ。気難しい男だという噂だったが、当人は「俺は気難しくない、単純なんだ。複雑な人間が俺のことを気難しいと言うんだ」と言う。「俺は大酒飲みで肝硬変だ」と私が言うと、彼も即座に、「そうか、俺も同じ肝硬変だ」と応ずる。波長が合うようだ・・・(田山力哉 「キネマ旬報」シネマ・ア・ラ・モード)

リシャール・ボーランジェ
 
 
 
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