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FOTOLOGUE/フォトローグ
 
  FOTOLOGUE東京  9/14
 
  エプソンR−D1はデジタル・ライカの夢を見るか?
 
  ジョニー
 
M4以降、M6やM7などの低倍率のファインダーに馴れているとD−R1の等倍ファインダーはやはり使いづらい。広角レンズたとえば28ミリレンズを取り付けた時の枠(CCDがAPS−Cサイズなので1,5倍の42ミリ相当となる)の全域を見ようとすると目玉をぐるぐると回さなけれはならない。それくらいこの等倍ファインダーはおおきいのだ。ひろすぎるともいえる。
人間は片目だけぐるぐる回すことはできないのでファインダーを覗いた目をぐるぐる回そうとすれば、もう一方の目は閉じることになる。となると両目を開けてみえる像の左右の大きさが等しいなどと云うメリットはもうない。目玉をグリグリしなくてもかろうじて済むのは35ミリをつけたときの枠(53ミリ相当)からである。広角枠を見るためにはどうしたってファインダーの倍率はひくいほうがいい。まして眼鏡を使用している時はなおさらである。ちなみにライカのM3は0、9倍である。これが50ミリ枠をみるのに目玉を回さなくとも済むギリギリの倍率なのではないだろうか。
ヘキサーRFはそのために意識的に倍率を下げたファインダーを採用している、らしい。そのせいで50ミリ枠が75ミリの枠のように小さく感じられてしまうが、反面28ミリ枠の視野が眼鏡を掛けていてもひと目で見渡せるというメリットがある。このへんは製品に対する考え方の違いかも知れないのでなんともいえないが実用ライカがM6あたりになっている今(そのM6にもファインダー倍率の違うボディがあるが)いまさらM3のファインダー倍率をも超える等倍ファインダーを採用することの意味は何処に。はたして等倍ファインダーはそんなにいわれるほどすごいのだろうか?
R−D1の背面、M6だったらフィルム感度設定ダイヤルの位置するところには装着レンズと実際の撮影画角?の換算表が張り付けられている。それがいかにもライカ風であって心憎いデザインである、といえるかどうかもじつはビミョーなのである。
現代ライカレンズには装着位置を知らせる赤いポッチがついている。それをボディ側の着脱ボタンに合わせて差し込めばわずかな手首の回転でカチリという音とともにレンズが装着される。コニカはその赤いポッチを小豆色に変えて踏襲している。ただの赤いポッチだが実用性のあるこのポッチのデザインを色を変えてでも踏襲したのはいいことだと思うしライカ的な(現代においてはそうは思えないかもしれないがきわめて機能的なデザイン)精神のあらわれだとおもう。
R−D1もボディの裏にライカのような換算表をもっている。しかしそれがライカのM4−Pのそれを彷佛とさせたのではマイナスだとおもう。というのもM4−Pではそれまでの可動式フィルム感度メモ(フィルムインジケータと呼ばれていた)だったダイヤルをコストダウンでただのASA−DINの換算表が印刷された薄いアルミ板にしてしまったからだ。M6になるとその場所はあらためてフィルム感度設定ダイヤルという実質的な機能を持つことになる。
これはデザイナーの責任なのだろうか。それともライカの亡霊に取り憑かれた誰かが起こしたマチガイなのだろうか。フィルム巻き戻しノブを使って上下2段に仕組まれたジョグダイヤル機能も、シャッタースピードダイヤル内に組み込まれた撮影感度設定もモニター画面上でのデジタル・カメラの機能の呼び出し方法も、一般的なデジタル・カメラとはいささか異なるとはいえほとんど説明書なしに使えてしかも理にかなっているようにおもわれる。このへんは最近の簡単操作が売りのコンパクトデジタ
ル・カメラよりも分かりやすくできている。
M4−Pのペラペラの換算表はコストダウンという必要悪によってしかたなくのことなのである。それが証拠に今のM7では露出補正機能まで組み込んだ立派なダイヤル(使い勝手はよくないれけど)になっているではないか。何を今さら一番貧乏なころのライカのマネをしなければならないのか理解に苦しむ。一方で現代ライカの源流であるM3をもしのぐ等倍ファインダーを採用しながらである。
だからこそこれはライカのことをよく知らないデザイナーの責任なのだろうかと勘ぐってしまうのだ。このデザインセンスではフィルムも入れずに首から下げたり磨いたりして悦にいっているライカマニアの方々は納得しないだろう。クロノグラフ風の メーターにしてもこれはライカというよりもむしろコンタックスの持つイメージだ。 男性的なコンタックスに対する女性的なライカ、この二つのメーカーにこんなイメージを持つのはわたしだけではないだろう。軍艦部のクロノグラフ風のメーターの意匠はあまりにも男性的なイメージが強すぎるようにおもう。同じ腕時計風にするのならばここはライカのフィルムカウンターのように小窓のレンズから文字盤の数字が見えるようなものにしてほしかった。
まあないものねだりをしてもしかたがない。そのうちに本家ライカからもライカデザインのレンズ交換のできるデジタルM型ボディが出るだろう。ライカにはそんな技術力はないなどという人がいるだろうがそれはあまり問題ではないように思う。たとえライカにその技術力がなくともライカにはライカという強力なブランド力があるのだからそうやってデジタルのM型を出せばいいのである。