Copyrighted by
© TPO co.,ltd
All Rights Reserved.
FOTOLOGUE/フォトローグ
 
  FOTOLOGUE東京  8/9
 


 写真のちから

  ジョニー
 
2
最近、妻と美術館や写真展にいく機会がふえた。原美術館に「野口里佳-飛ぶ夢を見た-」を見にいき、竹橋の国立近代美術館では「ブラジル・ボディ・ノスタルジア」を、ある日は銀座八丁目のごらくギャラリーで「エドワード・レビンソン」のピンホール写真を、近くのハウス・オブ・シセイドーでは「マン・レイ」展をと写真展のはしごである。べつの日には恵比須の写真美術館に「世界は歪んでいる。」というずいぶんとおおげさな名前を冠したオーストラリアの写真家たちの写真を見に行く。
そして先日は横浜美術館の「ラジカル」というには少々らしからぬ自主規制の入ってしまった「ノンセクト・ラジカル現代の写真?」を観に。
なかでも妻の気に入ったのは「石川真生」のようで、順路で云えばこの展覧会の最後となる展示室で長い時間をかけて写真を見ていた。今でいうところの作家性のある写真と云うよりはフォト・ドキュメンタリー(記録もの)的なスタイルで活動している彼女がわたしたちと同世代なのも気にいった理由のひとつなのかも知れない。
最近になって一緒に写真を見て歩くことになったとは云え、元来写真に興味があるわけではない彼女が写真集の「港町エレジー」と作者の沖縄での生活を綴った「沖縄ソウル」という2冊もの本を購入したこともかなりめずらしい。「石川真生」が70年代のワークショップ写真学校-「東松照明教室」出身であるという話もたぶんその本からの受け売りに違いない。
展示のスタイルとしては写真に短文のキャプションを付けて読ませ、かつ見せるといういわゆるフォト・ルポルタージュというのであろうかオーソドックスなやり方である。
被写体との距離が近いと感じられるのはいかにも彼女らしいところだ。若かりしころの作者の写真とおぼしきものもあって彼女の生きてきた道のりを垣間見ることもできる。写真と文章とは互いにおぎない合いながら基地の街沖縄を、あるいは港湾を、ひとびとを、といつでも石川真生の目線で記録している。その写真はオーソドックスではあるがたしかで誠実なものが持つ説得力がある。
30年くらい前まではさかんだったこのような手法を手垢のついたものとして遠ざけるようになってしまったが、案外と人々はこういったフォト・ドキュメンタリーのことを悪くは思っていないようである。むしろその判り易さからか、そこにある種の写真のちからのようなものを感じているような気すらする。いや、まさにそのことがこの手の写真への批判の理由のひとつにもなっているなどということは百も承知だとはおもうが。
「沖縄ソウル」石川真生 太田出版 定価二千円  ISBN4-87233-686-0C0095