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FOTOLOGUE/フォトローグ
 
  FOTOLOGUE東京  3/7
 
木村伊兵衛と土門拳そしてチャーリー・バード・パーカー
  ジョニー
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今さら何でという訳でもないのですがやはり日本写真史のなかの大物二人展ということで有楽町で催されている「木村伊兵衛と土門拳」という写真展にいってきました。いままで二人の写真が同時に展示されることはなかったというのも意外でしたが、ところどころでイメージの重なっているように思えたふたりが、じつはまったく異なった質を持った写真家だったということにあらためて気づかされた思いがします。
剛の土門と柔の木村伊兵衛というのは伝記などで色々書かれていますし、東京の下町生まれのお坊っちゃんと東北から生活のために上京した苦労人という対比もどうなんでしょう。まして、よく知られている写真のそのオリジナルプリントの質感がどうのとかいうのも今さらのような気がします。
わたしは木村伊兵衛や土門拳という日本写真史のなかの大御所の名前をきくとすぐに不出生のジャズプレイヤーのチャーリー・パーカーとマイルス・デイビスをおもいだします。偉大なジャズプレーヤーでありビ・バップ・ジャズの草分け的存在だったてはさておくとしてもスリリングでスピード感溢れるアドリブの魅力は半世紀以上たっ連れていってくれるだけの力を持っています。独特の錆びたような渋い音質と、コードから次のコードへ移るそのスピード感こそがチャーリー・パーカーの魅力だったわけです。ちょっと前、七十年代くらいまではパーカーの亡霊が生きていて、ジャズを演奏す茶ではお客がレコードをリクエストできるというシステムがあって、チャーリー・パー カーの曲をリクエストする時はなぜだか妙に他の客の視線が気になったものです。しかし八十年代にはいると腕っこきのスタジオミュージシャンたちによってサックス・アンサンブルでいちばんいい時代のパーカーの演奏のコピーをそっくりそのままプレイするというグループがあらわれるというようなことがあって、これがまたアドリブの一言一句、いや一音片句も変えずに演奏していて、その新しい録音の音はすばらしそのままなぞるのか、これをジャズといっていいのかしら?という疑問も起こったものです。まあ、今日のようにジャズがちょっとこじゃれた音楽というような立場にはなかった時代の最終期には、そんな風な妙に堅苦しいような疑問もじゅうぶん可能だったというわけです。
と、まあそんなことと同じようにいまの時代には「木村伊兵衛や土門拳」の亡霊の 束縛から自由な若い人たちがいます。若い彼らは木村伊兵衛も知らず土門拳も知らずに新鮮な目で彼等の作品に触れることもあるでしょう。そういう彼らの目には土門拳や木村伊兵衛の写真は乗り越えるべき写真史上の遺産とかではなく、同時代の写真と 区別なくいま「そこにアルもの」として写っているかも知れません。
何ものにもこだわらない束縛されない軽妙なバランス感覚。そのような意識の在り方はうらやましいようでもありますが、ジャズでいえばバップへの反発の結果として マイルス・ディビスやギル・エバンスのようなひとたちがモード奏法をひっさげて新 たなジャズの地平に歩をすすめたわけです。単純化していえばジャズの歴史のなかで はパーカーのコード奏法の絶対的な凄さがあったゆえに、ギル・エバンス=マイルス らのモード奏法がうまれたともいえるわけです。そうそう、チャーリー・パーカーの 「スウェーデン・ライブ」にはマイルスも参加しいてたんですよね。
歴史認識なしの感覚的なモノの見方だけではとどかない深い理解というものもある、 ということを若い子供達にももわかってほしいような気がします。いや、「わかって いるって」という言葉が聞こえてきそうですが。流行り言葉でいえばリスペクトする ということです。アメリカのヒップ・ホップのミュージシャンたちはライバルたちに 向かってあんたには敵意はないんだよ、とでもいう代わりにリスペクト、リスペクトとなどとインタビューで叫んでいますし、日本のヒップホップ小僧たちもその物まね のようにまるで合い言葉のごとくリスペクトといいますが、そういったものとはちが う本来の意味でのリスペクトです。
この展覧会で木村伊兵衛や土門拳の撮った写真の壁にかかった著名人たちの写真を 「ああこの人ははもういないんだ」とか、旧き東京の面影をうつした写真に「へえ、 むかしはこんなだったんだ」と面白く見たりする、いやそれはむしろフツーの見方な んだけども、のとはちがう視点、あの写真がここにあるということ、ロラン・パルト 風にいえば「プンクトゥム・punctum」のとげに刺されることのよろこびをすなおに 感謝してあらためて見てたいとおもいます。
 

スウェーディッシュ・シュナップス
POCJ-2596 ポリグラム



チャーリ-・パーカー・カルテット UCC-9111 ビクター

チャーリ-・パーカー・ウイズ・ストリングス UCCV-9112 ビクター