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FOTOLOGUE/フォトローグ
 
  FOTOLOGUE東京1/19
 
「ライカを買う 
〜賞味期限付き〜
    ジョニー
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ライカを買う。このカメラは2年ほどまえに写真家のハービー・山口さんが銀座のライカギャラリーで写真展をやったとき「月刊写真工業」の社長をハービーさんに紹介されてその彼がこのカメラを持っていてシャッターを何枚か切らせてもらったことがあったのです。そのときこのカメラのシャッター音の静かなのに驚いて、ハービーさんと、いいねえ、次はこれですかね、と話したときのことがずっと頭のすみに引っかかっていました。
電子制御の布幕シャッターは電池がないと60分の1と125分の1のふたつしか使えなくなります。電池がなくなると使えなってしまうライカなんてライカの自己否定じゃないの、といちゃもんをつけるくらいにはライカマニアなわたしには、その変にグレーがかった梨地のクロームメッキの色やM6からのお決まりのまん中の赤いマーク、不粋な角張ったM7のロゴも気に入らず、それらは今すぐほしい、と言う気持ちをしばらくのあいだ抑えておくには十分な理由だった訳です。
シャッター制御やストロボのTTL制御のため組み込まれた電子回路をもったライカは当然ながらいままでのような機械式のライカを修理する町医者にはお願いできません。代理店経由でライカの修理工場、今では日本国内にもあるけれど、に行くことになります。何にもまして電子部品の保有が切れてしまえばそれでカメラはおしまいになってしまうのです。機械部分はゆうに半世紀以上の耐久性をもちながらそれらの電子部品のために使えなくなってしまう、「賞味期限付き」のライカとも揶揄されるゆえんです。
2003年、ライカがM6を製造中止したあと、巻き上げレバーや巻き戻しノブを旧いライカ、あえていえばM2風に改装した機械式ライカMPを出しました。M7嫌いだったわたしにも、いやそういった人にこそのライカMPだろうと楽しみにしながら銀座にいったと思って下さい。
赤いライカのマークがなくなってトップカバーの上部になつかしいIeicaのエングレーブ、クラシックなスタイルに戻った?とはいってもフィルムカウンターの文字盤の文字はM7のそれと同じだしシャッターダイヤルも小さくなって指掛かりが悪くなり、これならいっそ(ライカに露出計が内蔵されていないのはデメリットというわけでもないのだから)調子の良いM4かM3でも買っちゃえばいいんじゃないの、という誘惑の声が聞こえてきます。
たっぷり30分かけて悩んだ末に結論を出しました。ライカとは長いつきあいだしいちどM7ならと言った手前ってものがあるんだから(そんなことだれにいったわけでもないのけど)ここはM7という選択が一番ではないかと。
新品のライカを手に入れる、しかも一生に2度ものチャンスなんてものはそうないだろうと、そう思うとあばたもエクボでいままで気になっていたグレーっぽい梨地のメッキの色もライカの赤いマークも御愛嬌と思えてしまうから不思議です。AUTOモードでAE機能をつかえるメリットはヘキサーで充分知っていますし、ファインダーだって見馴れたライカのそれですから悪いわけはありません。次の代までライカを残そうと思えばまた違った選択もあるのでしょうがわたしの代で使い切ってしまう、と考えれば「賞味期限付き」というのもそれはそれでいいんではないかとおもえます。
思えばわたしの周りにはそういった「賞味期限付き」あるいは「賞味期限切れ」といったものがずいぶんとあります。十数年つきあっているMacOS(むかしの漢字Talkとか言ったころから)しかり、コンタックス(勿論Nシリーズではない)の一眼レフとレンズたち、偽ライカとかブリキ細工とか謂われている旧ソビエト製のゾルキー(しかも輸出仕様の英語のネーム入り)、トーレンスのアナログプレーヤ(SMEのロングアームにオルトフォンSPU付き)、かつて超ド級といわれたビクターのCDプレーヤZ900、ヘキサーRF(ヘキサノンF2/35ミリ付き)など、どれが「賞味期限付き」でどれが「賞味期限切れ」なのかはご想像におまかせするとして、こういったものを日々使用していると、この電子制御のM7も最後のライカとしてはいいんじゃない、とおもえるようになります。この最後のと言う意味はライカのメーカーとしての最後と言うことではなく、わたしが買う最後のライカという意味ですが。