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FOTOLOGUE/フォトローグ
 
  FOTOLOGUE東京11/21
 
「秋の葉山散歩」
  ジョニー
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鎌倉は鶴ケ岡八幡の境内の木立に隠れるように美術館がある。2階の喫茶室でのコーヒーは外界が観光客でにぎわうシーズンにも、意外や静かでのんびりとした気分に浸れる時間だった。その県立近代美術館が葉山に分館を作った。海っぺりの松林を切り開いたところにそれは建っている。ガラスとコンクリートで出来たモダンな姿がまだあたりの景色に馴染んでいないせいなのか、なにか妙に白々しいような浮いたような雰囲気である。
  
日本では珍しく海辺の美術館ということでなのだろう、どの展示室にも窓はない。唯一、松林の向こうに海を見渡せる場所に大きなガラス窓があるが、そこからの眺めはまるで一幅の絵のようでもある。
竹林と松林に面して傾斜した土地から突き出たようにガラス張りの喫茶室がある。一流ホテルの食堂が食べ物の提供を担当していると聞く。それを横目で見ながら遊歩道を下りて行くともうすぐ先は海岸で潮騒も聞こえてくる。小路はそのまま波打ち際までつづいているが、残念なことにここから海岸に下りることはできない。美術館を半周するように遊歩道が続いていて隣接する「しおさい公園」との間の海に向かう細い路地の途中にひっそりと「しおさい公園」の入り口がある。
 
「しおさい公園」はもと御用邸の一部であったものを町が譲り受けて公園に仕立てている。海を望む芝生の庭には四阿(あづまや)もあり、相模湾も一望できる。人の途絶えたような松林の中に散策路があるが残念ながらここも海岸に下りることはできない。すぐ目の前は一色海岸の浜で、夏になると浜茶屋の喧噪が松林越しに聞こえるが今は波の音だけである。夏と秋とではずいぶんと違う貌を持っているのも葉山の海の特徴であろう。
この公園には海洋博物館が併設されていて葉山の海の潮だまりの生態や相模湾の生物が剥製標本や模型を使って紹介されている。どこといって面白味のない小さな博物館だが昭和天皇が作ったという魚類の標本やノート類なども展示してある。ここは入場料を取るのだが子連れで行くと入り口で鯉の餌を呉れる。だから庭園の中に小さな滝となって蕩々と湧き出ている湧水の池の鯉に餌をやる愉しみもある。
正門を出ると左手に昔ながらの赤いポストを店先に鎮座させている雑貨屋がある。葉山にはこの手の赤い旧式ポストがいくつかあって季節季節にそれぞれの場所でお似合いの花木が色を添えている。ちなみにここのポストには夏ミカンの木である。
ここから三ヶ岡駐車場とある看板の路地を斜に抜けて行くと一色郵便局に出る。この特定郵便局は今の局長の父親の代からここで郵便局をやっているのだが、今はモダンな建物に建て替えられている。写真好きの郵便局長は2階にあるギャラリーで時々個展を開いたりもしている。このギャラリーは町民が使うこともできるが開館時間が夕方は5時まで土曜日曜は休みと郵便局とまったく同じなのでちょっと利用しにくい。
郵便局の前の横断歩道を渡って住宅街を暫く歩くと目的の蕎麦屋である。
住宅地の中の蕎麦屋は、造りもしもたやそのままである。この春に開店して、しばらくは昼過ぎには売り切れ仕舞いとなっていたのがこの頃はどうしたことだろう、夕方に店の前を通っても営業中の看板がかかっていることがある。商売熱心なのはいいけれど、脱サラで始めた蕎麦打ち、ましてや人を使わずに夫婦二人でやっているとなるとできることは限られてくるので、味の方が落ちていやしないかと心配になってくる。今日は久しぶりに寄ってみることにした。個人の住宅のようなの玄関を開けると、靴のまま入っていける20畳ばかりの板の間が広がっている。天井もふつうの家のような低さである。やや低めのテーブルが四つ。平日でしかも昼どきを過ぎたせいか今日は先客はいない。せいろを頼むと、小さな小鉢になにか入れてもってくる。どうもこれはサービスのひと品のつもりのようで、この前来た時はギセイ豆腐のようなものが入っていたのだが、今日はお新香である。奥さんの手作りと云った風情の一品である。
肝心の蕎麦の方は更級の流儀らしく細めのノド越しのいいものである。汁も矢鱈と甘いようなものではなくしっかりと辛い東京風で、変わりないのが一安心である。まあ、半年やそこらで変わられても困るけれどそんな店が多いのも事実。季節ごとの変り蕎麦もあるので今度はそれを味わってみようと思っている。
   
  
■番外編

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