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FOTOLOGUE/フォトローグ
 
  FOTOLOGUE東京9/29
 
フランク・ホーヴァット『写真の真実』
    ジョニー
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フランク・ホーヴァットは『写真の真実』のなかで、東西の有名な写真家たちにインタビューをしています。ヘルムート・ニュートンやクーデルカ、ピーター・ウィトキンなど興味深い写真家のインタビューものっています。ひとり一人の記事はそう長いものではないので気に入った写真家のインタビューだけをさっと読む、と云ったような楽しみ方もできます。
アメリカの軍隊では広い地域を探索しなければいけない時にはある地点を中心にし て渦巻き状にまわりながらその螺旋を拡げて探索範囲を広くしていく、ときいたことがあります。
彼、ホーヴァットのインタビューのしかたも独特です。インタビュー相手のフィールドの最外周から中心に向かって螺旋を描くようにインタビューをすすめます。しかもほんの一回りか二回りしたところでインタビューは終ってしまいます。大事な部分には決して触れようとしません。そのまわりをぐるぐると回っているばかりです。 レヴィ・ストロースの『悲しき南回帰線』のように民俗学の報告書とは思えないような饒舌と華麗な文章で、南米の未開の人々の研究を報告したように、あるいはソシュールの『一般言語学講議』のように難解で回りくどい言い回しを使って、しかも肝心なことは何一つ書かれていないように思える文章、それを幾度か読み返していると深い洞察力のまなざしによって発せられただろうとてもいい文章に出会ったするように。
真実の真実は自分で探し当てなさい、と云わんばかりのそういった文章は親切ではないかも知れませんが知的な大人の雰囲気をもっているように思えます、時としてそれが鼻持ちならないと感じる時があってもね。
この『写真の真実』と云う本に出会ったのはもう10年近く前になるけれど、何度か読み返しているうちに最近になってやっと写真家の語る深い言葉の意味をそのインタビューの会話のなかから見つけだせるようになりました。それは自分で暗室作業をするようになったり、積極的に写真展を見に行ったりしたことが影響しているのかも 知れません。そこで語られているのはそれぞれの写真家の写真に対する考え方のほん の表層にすぎません。大事なことはほとんど何も語っていないし、突っ込んだ問いも ありません。しかしあえて答えまいとするかのような写真家の答えのなかに真実の真実を見るチャンスがあります。そのような文章に発見した時には、ほんのわずかですがわたしもそれらの写真家達と同じ意識を持ち得たような、幸せな気分になったりします。インタビュー上手の明解で単刀直入、すっきり簡潔といったインタビューものではないので一読する限りでは、まだるっこしい感じがしますが二読三読することで好きな写真家の言葉からなにか受け取れるものがあるかも知れません。

フランク・ホーヴァット『写真の真実』  発行元(株)トレヴィル■