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FOTOLOGUE/フォトローグ
 
  FOTOLOGUEメルボルン1/6
 
メルボルン
バットをゆらーり、ゆらーり
  久保田真理 
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メルボルンの中心に位置するフリンダース ストリート駅から歩いて5分。私が2003年2月から通う、フォトグラフィー スタディーズ カレッジ(以下PSCと省略)があります。1973年創立で、約30年の歴史があるこの学校。写真専門の学校のため規模は小さいですが、1クラス12、13人で構成されていてとてもアットホームな感じです。
学校内の壁は白く塗られ、廊下や教室の側面には、生徒たちの作品が飾られています。レンガ造りの古い建物なので、それはまるで全体がギャラリーのよう。講義を受ける教室のほか、モノクロ暗室、カラー暗室、マックが20台ほどあるデジタルセンター、スタジオなどが完備。自然光が天井から降り注ぐスタジオは古い倉庫のような感じで、なかなか雰囲気があります。
昼間に授業があるフルタイムは3年(夜間のパートタイムは4年)のコース。1年の前期はスライド、後期はモノクロ、2年の前期はモノクロ、後期はカラーネガフィルム中心に授業が進められ、3年生になると、アート、コマーシャル、ジャーナリズムの中から専攻を決めて自由なメディアで作品づくりを行います。1年生からデジタルの授業もあり、フォトショップの使い方を集中的に学習。生徒のほとんどが高校で習ったことがある様子で、皆スイスイ使いこなしていました。うらやましい限り。
学期ごとに使用するフィルムが異なりますが、一貫して「フォリオ」と呼ばれる作品づくりの課題が出されます。例えば、人物、風景に関する写真を5枚ずつ、自由な作品を10枚提出といった感じで。各自でテーマ、アプローチ方法、予算などを決め、先生とその内容を話し合ったのちに撮影開始。そして、写真をクラスに持ち寄って意見交換します。 オーストラリア人は若くても自己主張が強いので、全体のバランス、作品を並べる順番についてなど積極的な意見が。
他の写真学校ではデジタル出力のみ行い、暗室作業を習わないところもあるようですが、PSCでは1年間、プリントテクニックをみっちり鍛えられます。1年時はAGFAのフィルム、ペーパーしか使うことが許されません。というのは、1種類しか使用しないことで、まずは基礎をたたき込むのがねらいらしいのです。私の先生は、同僚から飲みに誘われても「家でスポッティングしたいから」と言って断ったくらいのプリントのエキスパート。プリントに対する要求も厳しく、現像、停止、定着液がそれぞれ入ったバットを常に揺らして攪拌しないと、「正確なプリントができないからダメ」と言って、その場でプリントを捨ててしまう……。でも、質問すると丁寧に答えてくれ、よくできたものについてはちゃんと褒めてくれる、とてもいい先生です。
フルタイムの学生は日本と同様、20歳前後の人がほとんど。しかし高校を出て1年間、カメラショップで働いていた人、ヨーロッパやアメリカを旅してきた人などもちらほら。そして、パートタイムの学生は日本と少し様子が違います。20代後半はもちろん、30、40、50代ととても年齢の幅が広いのです。写真で生計を立てたいという人もいますが、純粋に学びたいという気持ちから来る人も。年齢は関係なく、学びたいことがあれば学校に戻るという風土があるように思いました。そういったいろんな経験を積んだパートタイムの学生との暗室でのおしゃべりは、とてもいい勉強に。
Photography Studies CollegeのHP
http://www.psc.edu.au/