現地での下馬評では、ジャック・オディアール監督の『UN PROPHETE』が一番人気。僅差でジェーン・カンピオン監督の『BRIGHT STAR」、アルモドバル監督の『LOS ABRAZOS ROTOS』なども評価が高いようです。対して、ラース・フォントリアー監督の『ANTICHRIST』、ギャスパー・ノエ監督の『ENTER THE VOID』などには厳しい評価が。でも、最終的には審査員たちが決定をくだすのがカンヌの面白いところ。結果は後ほどお伝えします! (by tmk)
−カンヌレポートQ−
カンヌ会場にて、東京の街を観る。
(09.5.24UP)
5月23日
マーケットも閉まり、少しずつフェスティ バルの終わりが近づいてきた様子を醸し出してきているカンヌ。今日はイザベル・コイシェ監督『MAP OF THE SOUNDS OF TOKYO』とギャスパー・ノエ監督『ENTER THE VOID』を見ました。この2作品はどちらも東京が舞台。『MAP OF THE SOUNDS OF TOKYO』は、菊地凛子演じるミステリアスで孤独な女性、リュウと、スペイン人のダビッドとの東京での恋愛を描いた作品で、タイトルのとおり、コイシェ 監督がとらえた「東京の音」に満ちた作品。ラーメンをすする音、築地の魚市場(リュウはここで働いているのです)を歩く長靴の足音…菊地凛子は、「バベ ル」の女子高生役よりも、今回は本来の年に近く、神秘的で、でもどこか寂しげな日本人女性をあの印象的な大きな目で演じていました。
『ENTER THE VOID』は、舞台は東京であるものの、あくまでもそれは作品を活かす「装置」としての東京。登場人物も殆ど日本人ではありません。主人公は東京で暮らす ドラッグのディーラー。仕事はアンダーグラウンドですが、小さい頃に両親を自動車事故で亡くしたため、妹をこよなく愛しています。ところがドラッグの取引 の現場に警察の手が入り…といった話。基本的に主人公は鏡に写る以外は顔を見せず、後ろ姿のみ。一緒に東京の街を歩いたり、浮遊しているような不思議な感 覚に襲われます。ただ、実験的なシーンも多くあり、批評家達の採点では辛口の点数も多いよう。
5月22日A
もう一本、コンペ外作品を見ました。『A TOWN CALLED PANIC』、人形を使った作品です。説明が難しいのですが、子供が手に持って遊ぶような、ミニチュアの人形ってありまよね。あれを少しずつ動かしている 感じです。動きがぎこちないけれど、だからこそそこが面白い。設定も、カウボーイとインディアンが一つの家に一緒に住んでいるのですが、(このあたり、子 供が遊ぶミニチュアセット的です) 予想に 反して、リーダーシップを取るのは馬!本来は勇ましいはずのカウボーイ達はいつもオロオロして、馬に助けを求めるばかり。そんなカウボーイとインディアン が、馬の誕生日のために、レンガでバーベキュー用の台を作ろうと思ってレンガを注文したところ、間違えて50万個頼んでしまったところから、街中が大騒ぎ になり…という話です。街中で話が終わるのかと思いきや、海底の生物やら、怪しげなことをしている不思議な団体やらも出てきて、驚くばかり。際限のないイ マジネーションに驚いた1日でした。(by tmk)
『A TOWN CALLED PANIC』
5月22日@
今日はアウト・オブ・コンペ作品のテリー・ギリアム監督『THE IMAGINARIUM OF DOCTOR PARNASSUS』を見ました。街から街へと興行をする、ドクターパルナッソス率いる劇団。舞台の上の鏡を通り抜けると、観客は自分の想像の世界に入る ことができるという話なのですが、今は亡きヒース・レジャー演じるトニーが橋の下に吊るされているのを助け、一緒に回るようになってから、お客は入るよう になったものの、不穏な空気が流れはじめ、やがてパルナッソスが悪魔と取り交わした契約が明らかになり…。とにかく鏡を通ったあとのイマジネーションの世 界の描写がすごい!入る人によって見えるものは違うのですが、大きなハシゴで雲を掴んだり、巨大な靴やバックに囲まれたり…。見たこともない世界に身を委 ねることができます。この作品はヒース・レジャーの遺作となりましたが、鏡を通った後は、トニーは場面ごとにジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ ファレルの顔になり、(もちろん上に書いた本人が出演)そういった意味では俳優陣も豪華。監督の頭の中を見せてもらっているような、めくるめく想像の世界 に目を奪われる二時間でした。(by tmk)
『THE IMAGINARIUM OF DOCTOR PARNASSUS』
5月20日B
さて、ところ変わって批評家週間。批評家週間はミラマールという劇場で開かれているのですが、パレから一番遠い場所で、筋肉痛の源!
私が行ったときは、監督週間とは違い、列には余裕がありました。(ちなみにスタッフの人も親切でした!)上映前は監督が舞台で挨拶し、観客が暖かい拍手で迎え、新人監督が多いため声援も飛ぶなど、カンヌの中で一番アットホームに思える部門です。この日私が見たのはStudio Canalの短編特集。(そのため舞台挨拶の写真には監督がズラッと並んでいます)
肝心の内容は、短時間で観客の心をつかむために、設定が特殊だったり、コメディが多かったりと、とても面白い。やさぐれたサンタクロースのそりが燃やされてしまう話、カンフーの師範のふりをしなければならない弁護士の話など面白いものが沢山ありましたが、その中でも『A HOOKER AND A CHICK(娼婦とヒヨコ)』という女性監督(Clement Michel)の作品は、感覚が日本の女性にも合うものでした。朝早く、もめ事から突然乗っていた車から道路に降ろされてしまった主人公の女性。朝早くでバスもなく、仕方なくとぼとぼと歩き出しますが、ジョギングをしているおじさんに娼婦と間違えられる始末。情けないやら、腹が立つやらで苛立っていると、向こうからやってくるのはなんと、ヒヨコの着ぐるみをかぶって自転車に乗っている男性・・・!着ぐるみは可愛らしいのですが、顔の部分は男性の顔が出ているので、情景としてはとてもシュール。主人公も、とまどいながらも、そのヒヨコの男性の自転車の後ろに乗って家まで送ってもらいます。可愛らしさと、滑稽さと、少しだけお互いに惹かれあう心の動きと。たった14分の作品なのに、ヒヨコと、ヒヨコが運転する自転車の後ろに乗る主人公というシーンと共に心に残りました。もしかしたら、これは日本発の「カワイイ」文化の伝播なのかしら!?などとホテルまでの遠い道のりの途中で考えながら、カンヌの夜は更けていくのでした・・・(by tmk) 『A HOOKER AND A CHICK』
−カンヌレポートJ−
「監督週間」会場での小競り合い。
(09.5.22UP)
5月20日A カンヌ映画祭にはコンペや「ある視点」部門以外に、「監督週間」や「批評家週間」があります。監督週間に『I LOVE YOU PHILLIP MORRIS』(監督:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア)というジム・キャリーとユアン・マクレガーがゲイのカップルを演じるコメディを監督週間に見に行きました。
ジム・キャリーが舞台挨拶をするかもしれないという噂もあり、二時間以上前から大混雑。私もジッと待っていたのですが…直前で何とコンプレ(満員)!呆然と立ち尽くしていると、スタッフと観客との間で軽い小競り合いが発生しはじめました。元々人気の高い監督週間、入ろうとする観客と、満員だと冷たく言い放つタキシードのおじさんスタッフとのやりとりは毎度のこと。肩をすくめて、騒ぐ観客をクールに見つめるタキシードのおじさん達はもはやカンヌ名物。
しかし今日は、パスを持った人だけでなく、わざわざチケットを買った人も入れず、いつもより増して観客の不満が高まり、ついに観客たちが鉄の冊を無理矢理 ドアにねじこみはじめました!バリケード破りだ!と言う声や「パ・コントン!パ・コントン!(納得いかない!)」といった大合唱まで起こる始末。でも、あくまでも雰囲気は明るくて、自分達の主張を通すのを楽しんでいるよう。
結局おじさん達にドアは閉められてしまいましたが、明るく自分たちが映画を見る権利を主張する人々に、じっと耐え忍ぶタイプの日本人である私は驚くばかりなのでした。(by tmk)
『I LOVE YOU PHILLIP MORRIS』は、『バッドサンタ』の脚本を手掛けたコンビの監督デビュー作。今年のサンダンス映画祭でプレミア上映され、ユアン・マクレガーはサンダンスで「The 2009 Ray-Ban Visionary Award」を受賞しています。エグゼクティブ・プロデューサーはリュック・ベッソン。
『I LOVE YOU PHILLIP MORRIS』
アカデミー賞にもノミネートされた作品で、ロン・ハワード監督の演出と俳優の演技も素晴らしいがピーター・モーガンの脚本が傑出している。モーガンが書いた舞台が基になっていて、「絶対に映画に出来ない演劇にしたので、映画化の依頼があったときは驚いた」とのことだが、舞台版では対話劇だったのを映画的に見事な脚色を施している。監督デビュー作の「The Special Relationship」(11)でモーガンがブレア、クリントン、ブッシュの関係を描くのが楽しみである。