マスコミの前に登場する金城武は、いつも控えめで、時に所在なげである。
問答無用のイケメンなのに、スター然としていない。拠点としている台湾では、「バレンタインを一緒に過ごしたい男性」ナンバーワンに選ばれ無敵のモテモテぶり。けれど、女性関係のゴシップと縁がないのも不思議だ。
実は彼自身「仕事以外ほとんど外出しない」と公言している筋金入りのインドア派。おまけに、人気ゲーム「鬼武者」に声優としてだけではなく、製作にも参加するほどの相当なゲーム好きで知られている。オフは自宅でもっぱらゲームに勤しむという、色っぽい話とは無縁の意外なオタクっぷり。単なるマスコミ嫌いというわけではなさそうである。
金城武の内向的な性質は、生い立ちに因るところが大きい。台湾生まれの台湾育ち。日本人の父と、台湾人の母を持つ。父親は仕事で不在のことが多く、7歳になっても日本語が話せなかった金城少年。ご近所からは「日本人」と垣根を作られ、日本人学校では「台湾人」と差別されてつらい日々を送った。アメリカンスクールに移ってからは楽しい学園生活を満喫したというが、人見知りな性格と、どこにも属さない独特の浮遊感は、そんな少年時代に形成されたものだろう。
スカウトをきっかけに、「バイクを買いたかった」ので高校時代より芸能活動を開始。その後、ウォン・カーワイ監督の『恋する惑星』(94年)で注目され、日本でもテレビドラマでブレイクしてからの活躍は周知の通り。
アジアが誇るスターとなっても、プライベートを明かさないミステリアスさと、少年がそのまま年を重ねたようなナイーブさでファンの心を掴んでいる。アクション映画の巨匠ジョン・ウー監督から食事に誘われ、「どんな映画に出たいの?」と聞かれたチャンスに「コメディです」と答えてマネージャーに叱られた、なんていう野心なさ過ぎのエピソードも彼らしい。
ここ数年、日本での露出は控えめだが、中華圏では大物監督からのオファーがあとを絶たない快進撃が続いている。昨年はアンディー・ラウ、ジェット・リーの2大スター共演で、史劇アクション『投名状』(ピーター・チャン監督)に出演。スクリーンで見せる表情にもぐっと渋みが増してきた。
日本では今秋、三国志の英雄・諸葛孔明を演じた大作『レッドクリフ』公開が控える。「ジョン・ウー作品なのに僕だけアクションなし」と笑う金城武。監督が彼の「コメディ志望」を覚えていたからかどうかは不明だが、古典のイメージを打ち破る新たな孔明像に乞うご期待だ。(1034文字)
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